昨日は生まれて初めてブックトークというものをしてきました。授業の時間内ではなく、休み時間のうち15分を利用して、自由参加の催しです。私にとってもブックトークははじめてですが、実はうちの学校ボランティアとしても初めての試みでした。
■ブックトークまでの経緯
昨年から1年間同じ時間を利用して、学校から要請のあった読み聞かせ活動をやってきました。ところが、使える時間は15分、子供たちの自由参加ということで、長い物語はダメかもしれないと、だいたい15分で2冊です。となると長文は読めません。かといって、「続きは来週」という形式をとって果たして子供たちがついてきてくれるか? などなどのこともあり、必然的に本の選択は 文字の少ない 幼稚園年長向けから小学校低学年向きの絵本になります。それに伴って、読み聞かせにやってくる子たちは1年生主体になり、2,3年以上はほとんどやってこないことが私のジレンマでした。
絵本は大人が読んでもそれなりに面白かったり、感動したりするものなのですが、小学生は「自分より小さな子用」だと感じるとはなから参加しない傾向があるように思いました。 実際、息子は「今日は読み聞かせがあるよ」といっても興味も示しません。読み聞かせを楽しみながらやっている人たちはやはり低学年のお母さんたちでした。 ギャップを感じた私は「本の紹介がしたい」と思うようになりました。集まりのときにやりたいことをしゃべっていると「本の紹介はブックトークだよ」と「実験的にブックトークをやってみる?」という話になりました。
■ブックトークって何だろう
さて、初めて聞いた言葉「ブックトーク」です。単語からすると本のことを話す=本の紹介かな?とは思ったのですが、「これがブックトークだ」というのを見たことも聞いたこともありませんでした。 いえ、正確には、朝のNHKニュースで見た事はありましたが、それは私がやりたい紹介ではなかったのです。
以前見たブックトークは以下のようなものでした。
紹介者が、本を山ほど持ってきて、早口で本の導入部を何ページか読む。そうして佳境に入るまえに 「続きは読んでください」といって本を置く。子供たちは「え〜〜〜〜!」とぶぅぶぅ言うけれど、その時には次の本の紹介が始まっている。それも導入部でおしまい「続きは読んでください」が繰り返される。
それを見た私は、少し前にはやっていたアメリカ風英才教育を思い出しました。紙芝居風の絵を数秒の速さで見せながらその単語を呼び。。。というアレです。 私は少し古い映画ですが、「赤ちゃんはトップレディがお好き」という映画でも見た記憶があります。
これは、私が思っている本の紹介ではないのです。
そこで、とにかく基本を知りたいと、本で調べることにして、図書館から借りてきました。
借りた本の名前を控えてなかったので、たぶんコレだったと思うのですが、
これを読むと、まさに、私がやりたかった本の紹介に近いものが出ていました。 ああ、コレだ。私がやりたかったものは。。。と思いました。 やるからにはきちんとやりたい。
■ブックトークの準備
□1テーマを決める
別のボランティアで調べ学習に関わることもあったのですが、学校の蔵書は極端に理科系の本が少ないことを感じていました。
満足に使える図鑑さえないのです。校庭で見つけた葉を持ってきて調べたいと言う子が、調べる本がないということもありました。
でも、図鑑の面白さ、調べ学習の面白さを教えたい。
それから、子供たちの本の知識と実際の物へのつながりを確保したい。図鑑で見た事のある子も、目の前にある実物との結びつけができていないことも実感していたのです。まさに、ヘレンケラーの「ウォーター」の世界です。それをくっつけたい。
そうして、できれば本の世界の素晴らしさを少しでも伝えたい。
本が好きになって欲しい。丁度見つけた自然科学系絵本表紙に 葛がのっていたので、テーマは葛にすることにしました。葛だったらこのあたりあちこちで見かけることがあります。
□2紹介する本をさがす
本の紹介をしても、個人蔵書だったらなかなか読もうとおもっても子供たちの手に入りません。まずは学校蔵書から紹介本をピックアップしました。 かなり古い本ですが、草遊びの本が何冊かみつかりました。それから、これまで毎週「おはなし」の会だったわけですから、図鑑に興味がなくて、「おはなし」を聞きたい子もくるかもしれない。 選書に「おはなし」を混ぜることにしました。
それは、草がいきいきと書かれている
のはらのおみせにしました。
ここまでの選書は絵本中心で低学年用のものばかりです。高学年にも興味を持ってもらえる本も紹介したい。図鑑は学校にないので、手持ちの図鑑を利用することにしました。
まずは、葛が乗っている図鑑です。
それから、図鑑にはいろいろあるということも知って欲しい
食べられる木の実・草・毒草などが乗っている同じシリーズの図鑑
それから、図鑑にはいろいろな図鑑があることも教えたい。
そうして、自然界には思っているよりもたくさんの種類の動植物があることも知って欲しい。一種類の動物・植物だけで一冊の図鑑になっているもの
クモだけで1冊の図鑑になっています。
変り種。身近に見かけるアブラムシも何百種類もいることを教えたい。
カメムシ図鑑やダニ図鑑(三種類とも持っているので)どれにしようかとまよいつつも、カメムシはクモがあるから、アブラムシに決定。
それから、園芸植物の綺麗系も入れたほうがよいかと
(今となってはこの図鑑は今ひとつ物足りないのですが、意図は別のところにあるので)
図鑑の紹介は、高学年が来ても大丈夫だと思いながらも、読み物系でも中・高学年に何かほしいぞ。。。と考えていて思い出したのが
「葛の葉」といえば「葛の葉狐」。子供の頃に好きだった話だった。。と。しかし、検索してもなかなかヒットしません。いくつかヒットしたものを図書館で借りてきて読んでみたのですが、なかなか小学生に丁度良いものが見つからない。苦労しました。
青空文庫で葛の葉狐をみつけたのでそれをとりあえず確保しました。
図書館でみつけた本の中から、丁度良いと思われたのは、葛の葉狐 きたやまこう メルヘン文庫 これ、ほかのお話もとても面白くて実物があったら私も買いたいと思うのだけれど、すでに絶版。
alt="絶版本を投票で復刊!" border="0" width="99" height="33"> 復刊リクエストにご協力いただける方はぜひおねがい致します。
絵本をみつけたので、勇んで借りてみたけれど、
こちらはとても綺麗な本なのだけれど、高学年向けでないとムリな感じの文章表現(難しいです)
ほかにもいくつか探したのですが良いものがなくてこの二つにしました。
葛の葉狐も、陰陽師も両方読んでいたのに、調べて初めて知ったこと。この葛の葉狐に出てくる子供が安倍清明なんですね。読んだ時系列が違っていたのでつながっている物語だとはしりませんでした。
ということで、手持ちの文庫本の中から陰陽師をピックアップ。これは、高学年用。
あと2,3の本を準備しました。
□3シナリオ作り
人前で説明するなんて久しぶりのことです。おまけに、子供相手。授業ではないから、私の話が面白くなければ騒ぎ出す子もいるかもしれないし、皆いなくなってしまうかもしれない。ドキドキです。
まずは、皆をひきつけるために 葛の葉の実物を準備することにしました。 それから花の模型。マメの花が皆似た形であることを教えようと思いました。=>図鑑のマメ科へつなげます。
そうして、葛がどういうものに利用されているか。 くず餅、くず粉、葛根湯、葛湯、など実物を準備しました。
そうして説明手順を組み立てました。
それから、フリップ。時間が15分しかありません。絶対にこの時間に収めなければならないので、とにかく子供たちに伝えたいことだけは目に焼きつくように フリップを作りました。
□4リハーサル・根回し
リハーサルは、家族を相手にというとどうだろう?と言い出せず、前日夜になりました。でも、やはり何分かかるか見当がつかないと不安です。家で一度リハーサルしました。 ところが、当初10分くらいにしたかったのに、18分もかかってしまい、焦りました。
あちこち削れるところをアドバイスしてもらいました。(息子からも参考になるアドバイスが来ました。たまにこういうことやってみても良いかもしれない) リハーサルで息子が「え?そうなの?」と食いついてきたことも多くて「息子と同じような反応を子供たちがするのであれば、もしかしたらイケルかも。。。という感触もありました。
根回し。これは、どうしようか迷いました。中・高学年を図書室に呼び込みたい。でも、興味がない人に強制するわけにもいかないし、「高学年用の本の紹介です」なんていっても来る分けない(私が高学年の子どもでも、遊びを優先してしまう)。 息子の担任の先生に声をかけて、「興味のある人は来てください」と紹介していただきました。そのおかげで、わりと多くの子供が当日来てくれていたと思います。
■さて当日
運の悪いことに、新着本の開架時間と重なってしまいました。夏休み前なので、新着本を借りたい子供たちでごった返しています。ブックトークをする前の授業時間から「次の休み時間に借りられるようになるんだって」と上を下への大騒ぎ。 不安がよぎりました。
図書室がものすごくごった返してうるさくなってしまうかもしれない。聞きに来てくれた子も新着本が借りたくなってこちらには来てくれないかもしれない。
でも、もうしょうがありません。ダメでもいいや。
時間になって、楽しみそうに場所を取って待ってくれている子もいるにはいたけれど、予想通り集まりはそんなによくありません。でも、時間になったから、はじめようと決断してはじめました。
まずは葛の葉の実物からです。葉と花の話をしはじめたところからガッツリと子供たちが付いてきてくれている実感がありました。皆目を輝かせて一心にこちらを見てくれています。「お花を見た事あるひといる?」など、質問しても 皆が皆、しっかりと答えてくれています。 ヤッター!この調子で。「けさ、この葉を取りに行ったときには、まだ花が咲いていなかったけれど、キット夏休みの終わり頃には咲いているとおもうよ。普通に見ているとみつけにくいけれど、葉の下を見ると良く咲いています。花をみつけたらにおいをかいでみて、ファンタグレープのにおいがするよ」と言うと、「えー。ほんとー。」とザワザワ。全体が一つにまとまっていると言う感じ。嬉しい。話が進むにつれて、席にいなかった子までなんだろうと見に来て手をあげて発言してくれました。
そうしてシナリオの準備どおり順調に紹介が終わりました。 「今日紹介した本が書いてある紙をいる人にはあげますよー」というと、準備していたものが全部なくなりました。説明用に準備した葛。こちらも欲しいという人がたくさんあって全部なくなってしまいました。当日、高学年はきていなかったのだけれど、青空文庫から印刷した文(条件確認しました)も「ほしい」と言う子が何人も出てきたので、次の日までにコピーしておくということで約束しました。
そうして、今日、約束のプリントをもって 学校へ行きました。「もう忘れちゃってるかもしれないなあ」と思いながら。でも、約束した時間に昨日の子達は皆来ましたよ。中には1年生の子も来たので、「ちょっと難しいかもしれないよ。おかあさんに読んでもらうか、6年生になるまでしまっておいてね」と渡しました。
図書委員が「なんですか?」というので、「安倍の清明って知ってる?陰陽師のね。その安倍の清明は狐の子だったという伝説だよ」というと、「僕らもほしい」とプリントを持って帰りました。うれしいなあ。
子供たちと触れ合うのってこんなに楽しいことなんだ。。感動!
素直な心に触れることができ、おべっかなしのシビアな評価をもらえるこういう機会。 最初は、子供たちに伝えたいと思ってはじめたことだったのに、元気ややりがいをもらったのは私の方でした。 帰宅した息子に「次回もあるの?」と聞かれて、嬉しい! よーし。次回は何を企画しようかなー。(^^)
長い文、最後まで読んでくださってありがとうございます。
以下余談です。上で書いた赤ちゃんはトップレディがお好き
ダイアンキートン扮するやり手のキャリアウーマン。お金も、恋人も自由でオシャレな生活も全てを手にしていると思ったのに、遺産として転がり込んできた赤ちゃんの面倒をみることになり、それからお決まりのてんやわんやです。 最初はただ戸惑うばかりだったキャリアウーマンが、次第に赤ちゃんをかわいく思うようになり、公園デビューで育児に不安になったり、と普通のお母さんのような意識をもちはじめますが、赤ちゃんを育てることによって会社にもいられなくなり、恋人にも去られ、めちゃくちゃな状況になってしまいます。さて、逆境にもめげない彼女。なんといっても彼女には会社でもやり手だった手腕があるのです。彼女がそれからどうなるかは映画でどうぞ。。